みちのく雪見酒紀行2007
***目次***
1.上野駅
2.弘前
3.雪なし酒
4.大村美術館
5.山形
6.仙山線
7.ゴールへ向けてよろよろと
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1.上野駅 冬になれば「雪見酒紀行」に胸が騒ぐのはいつものこと。06年は羽越線脱線事故の余波で出発が遅くなったけれど、今年はそのようなこともなく、1月18日の夜行寝台列車を手配した。 キャリーを引っ張りながら線路沿いを南下する。確かに予想通り飲み屋は多いものの、いざ「この店で飲むか?」と観察すれば、帯に短し襷に長しと云うべきか、意に染まないところばかりだ。高そうな店や気取ったところは当然ながらまず避ける。チェーン店も嫌だ。屋台まがいで大勢若い人で盛り上がっているところも気が引ける。消去法で残った店を覗き込んで、隣がほぼ満員なのに、こちらにはほとんど客がいなかったりすると、それも何か不安になってしまう。 カウンターの中程に席を占め、鰊の切り込みとシャキシャキ・サラダ(大根とジャコのサラダ)で二合徳利を冷やで貰う。お品書きを見れば、 | ||||||||||||||||
途中の停車駅で目を覚ますこともないまま熟睡し、秋田駅接近を告げる車内放送で起こされた。7時近くで日の出前だけれど、辺りは既に明るい。雪の量は少なく、白と茶のまだら模様だけれど、これならば北上を続ける間に充分な積雪量になろう。
昨秋、「みちのく観楓会紀行」に際しても立ち寄った壱番館だが、今回も同じセイロン風ミルクティーを注文する。ちなみにコンチネンタル風ミルクティーなるメニューもあり、この差異を尋ねたところ、茶葉や抽出法は同じで、最後に生クリームが添加されるのがコンチネンタルとの答えだった。 | ||||||||||||||||
本を読みながら、昼酒会場の「野の庵」開店時刻の11時半を待つ。本の最後辺りが面白く、予定時刻を超過して長居をする羽目になった。弘前城内鷹楊公園からの、岩木山撮影には時間不足になったかと、若干反省したものの、いざ城趾に辿り着いてみれば、西の方に雲がかかり、いずれにせよ岩木山を撮影することは不可能であった。
追手門から入り、足早に西の郭を抜けて、春陽橋を渡れば、野の庵は目の前だ。おとないを告げると、顔見知りの仲居さんが姿を現す。 | ||||||||||||||||
そんなことを取り留めもなく考えつつ独酌が進む。いつもならば席について程なく顔を見せる女将が現れぬことを、訝しく思いつつも「外出しておられるか?」と考えていた。すると奥から恰幅の良い白衣白帽の男性が登場した。初めてお目にかかる野の庵のご亭主だ。女将は「白内障の手術で入院し、今日が退院予定」と聞いて先ほどの疑問も解消する。 ほろ酔い機嫌で城址公園を漫ろ歩いて抜ける。再び壱番館へ寄ったのは、ビジネスホテルのチェックイン時間には早過ぎたためだ。今度はキリマンジェロを飲んでみたが、これも旨かった。時間調整も上手く行き、部屋へ入ろうとしたとき、ちょっとしたやりとりから「多少狭いですが禁煙室も」あるとのことでそちらへ部屋替えする。この宿は一般的ビジネスホテルより広々した構成なので、狭いと云っても窮屈な思いをすることはない。午睡を楽しんだ後、5時半に黄昏の街へ出かけた。
最初は桶屋町の「鳥かん」へ行くつもりで、土手町商店街からかくみ小路へ入り、さして長くない小路を抜けたところで食指の動く焼鳥屋を見付けた。鳥かんに
執着はないから「駄目もと」で暖簾をくぐる。店内は五席ほどのカウンターと小卓二つが置かれた小上がりだけの、好みの規模で、オヤジと若い衆二人でやっている。
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明くる日、ちょっとした所用があり、八戸へ向 い、10時2分発の青森行き普通列車に乗車た。青森乗り換え後も普通列車利用を予定していたけれど、いざ青森について同じホームのすぐ向かいに、空席が充分ある特急が停車しているのを見て、ついこれを利用してしまう。これならば八戸到着が11時52分で、昼酒に好適なのに対し、普通列車だと1時32分着になってしまう こともあったし。
浅虫温泉あたりまではたっぷりの雪景色や海岸風景を楽しみながら行くが、太平洋側に近づくにつれ、積雪量はみるみる減少し、八戸に到着したときは、そこ此処に僅かな残雪があるのみの、茶色に乾燥した眺めになっていた。雪見酒はしばらくお休み。 | ||||||||||||||||
八戸から角館への列車選定も色々悩んで決める。八戸、盛岡間は東北線がなくなってしまったので、通し切符を買った以上、嫌いな新幹線を使わざるを得ない。盛岡で秋田新幹線を乗り継ぐと、角館着が11時53分で、昼飯昼酒は角館と云うことになるのだが、観光客相手の店こそ多いものの、鄙びた駅前食堂のような食指の動く店がない。
盛岡冷麺をメインにした食事を考える。以前から有名とは知っていたものの、食べることに熱心ではないため、盛岡を旅しても、わざわざ試してみることはなかった。それが秋のみちのく観楓会紀行で、Hさんが「盛岡で途中下車して盛岡冷麺」の試案を話してくれた。最終的には実現しなかったものの、興味は湧き、今回何か食べるならば冷麺がよかろうとなったのだ。
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田沢湖線は岩手山を右手に見ながら、雫石盆地をさかのぼり、赤渕辺りからは急峻な山間を蛇行しながら走って、横手盆地へと降りる、景観の変化が楽しい路線だ。それなのに新幹線ではそれを堪能する暇もなく、一気に盛岡、田沢湖、角館と移動してしまう。
石川旅館からいわゆる「武家屋敷通り」を抜けて、ガラス工芸の大村美術館へ向かう。辺りを歩いているのは観光客ばかりだけれど、シーズンオフのせいか、日曜日なのにその数は少ない。この辺りは雪景色か、枝垂れ桜の満開時期には絵になる景観だが、今は写真を撮る気にもなれない。 | ||||||||||||||||
そんなことよりも蒐集家の愛情がこもった品々が、それが少しでもよく見えるように心を込めて展示され、しかも混雑とは無縁の状態でゆっくり鑑賞できるのが嬉しい。この日も先客はいなかった。
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展示室とカフェで1時間ほどを過ごし、大村美術館を出る。まだ3時だけれど、これ以上観光名所を回る気にはならず、西へ向かい桧木内川を渡る。橋の上から河原を見ると、一応白く覆われているものの、積雪量は10センチに満たない。角館の伝統行事、火振りかまくらも、「雪があってこそ映えるものであろうに」、と他人事ながら気になった。
桧木内川を渡り返し、宿の方へ戻る、途中、安藤醤油醸造元すぐ脇を通り、立ち寄ろうか考えてやめにした。此処の蔵屋敷は中々に立派だし、女性当主が個性的な有名人で、そんなことから観光スポットとしては、幅広く紹介されている。しかし、肝心の味噌、醤油、その他の食品に関しては、好みが合わないのか、旨いと思ったことがないのだ。 石川旅館の夕食は、この晩もきりたんぽ鍋を中心としたもので、昨年とほとんど変わりがない。しかしこの宿にほとんど毎年くるのは、このマンネリに郷愁と安定感があるからで、石川のオバチャンとしか知らない老婦人と話しながら飲みかつ食うこと堪能する。彼女も八十過ぎたようで、後何年お付き合いいただけることか。
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1月22日の月曜日は穏やかに明けた。この日の予定は山形までの180キロ弱を移動するだけだから、いつもにもましてのんびりした行程だ。
10時24分秋田発、11時18分大曲の新庄行き列車に乗る。既に乗客がいて、ここからも二、三十人乗るけれど空席は充分にある。面白くないのは、座席が短距離通勤電車型のロングシートで、景色を眺めようとすると、振り向くか、反対側の乗客越しか、あるいは立ち上がってドアや後部へ移動しなければならないことだ。しかし車内を見回しても観光目的でいる暇人は見あたらなかったので、仕方ないことと諦める。
山形の宿、東横イン山形西口は
文字通り西口を出て徒歩3分のところにあり、辺りには大規模ホテルや大規模スーパーマーケットが目立つものの、それ以上に更地が多い。ちょうど四十年前の新宿西口を彷彿させる風景だった。
のんびり歩いて30分、5時半に店へ入る。先客は小上がりに五人グループがいるだけで、無人のカウンター席に腰を下ろした。冷や酒で飲み始め、左手に「禁煙席」の札があることに気付いた。女将に一言断りそちらへ移動。正面の壁にオデンの品書きが札になって下がり、それぞれ定価が標記されている。ほとんどが120円か150円。昆布と玉子を注文した。
店を出て、宿の方へ戻りつつ、もう一軒「さりげなくかつ小体な」居酒屋を探す。駅周辺の飲み屋街を二周ほどして、赤提灯に入った。
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雪見紀行もとうとう最終日となった。どんより曇っているものの、風もなく寒さを感じない。駅の自動販売機で羽前千歳までの切符、180円を買う。都区内→都区内の超長距離循環切符から、この区間だけはみ出しているためだ。 予想よりも乗客は多くて、八割方の席が埋まる。しかし次の北山形で半数ほどは下車した。羽前千歳が奥羽線から仙山線への分岐だ。立谷川の扇状地をさかのぼり、次第に山裾が両側から迫ってくると、間もなく芭蕉で有名な山寺(立石寺)だ。上方に 舞台造りの五大堂が小さく見え、とりあえず二枚撮影する。堂の真下辺りが山寺駅で、1分間停車する。 | ||||||||||||||||
落ち着いて五大堂を撮り直すべく構えると、仙山線の電線が画面中央を横切って邪魔をしている。昨年も腹立たしい思いで見上げた記憶が蘇った。
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山寺を過ぎると、線路は紅葉川沿いに屈曲を繰り返しながら上昇を続ける。面白山高原駅では、数人のスキー(スノーボード)客が乗降した。
既に雪はないので「雪見」は終わったわけだが、酒が少々残っていた。連日、昼夜飲み続け、体調不充分ではあったものの、これからが最終区間と頑張る。仙台駅で途中下車し、まずトイレにより腹具合を整理した。 | ||||||||||||||||